私が今まで最も多くデザインを手がけてきたプロダクトの領域は、産業機器の分野です。
店舗や公共施設、あるいは工場、研究機関などで使用される業務用機器は、「信頼性」と「使い勝手」そして「安全性」がシビアに問われる領域でもあります。
私はそこに、クライアント企業様ごとに異なる「造り勝手(コスト)」と「売り勝手(マーケティング)」を配慮することで、美しくバランスの取れた製品を世の中に送り出すお手伝いをしてきました。
とりわけ、少〜中量生産製品の筐体設計には、豊富な経験と知識に裏付けされた自信があります。
近年ではその領域を、潜水艇というさらにニッチな分野にまで広げ、唯一無二のスタンスを目指しています。
私のデザインプロセスは、先ず、開発が予定されている商品の企画の意図を知り、果たすべき役割や運用環境を深く理解することから始まります。
そして、メカ設計者はもちろんのこと、電気・ソフトの各エンジニアとも対話を重ねながら、開発の初期段階において「あるべき姿」を3Dで可視化します。
それは単なる外観提案ではなく、プロジェクトに関わる全ての人が一つのイメージを見ながら協議するための「叩き台」として機能します。
営業・製造・保守といった各部門の視点も取り入れながら、全体最適を図るためのファシリテーター的な役割を担うのも、プロダクトデザイナーの大切な使命のひとつだと考えています。
設計の進捗に応じて、内部構造まで可視化できるリアルな3D CADモデルを常にアップデートしていくことにより、関係者全員が開発中製品の最新イメージを共有でき、部署を超えて対等に意見を交わせる理想的な開発環境を提供します。
3D CADモデルで合意が得られたデザインは試作へと回され、そこで初めて手に触れることのできる「物質」として、「理想的な商品たり得るか」が厳しくチェックされます。場合によっては何回も設計変更が行われ、その度にデザイン修正が必要となることもありますが、私はそれらへの対応にとどまらず、その商品が市場に出て、お客様からのフィードバックが得られるまでが自分の仕事だと考えています。
このように、製品の「あり方」を構想し、共有し、実現してゆく開発プロセス全体に寄り添う存在であろうと、私は心がけています。
1980年、東京藝術大学美術学部デザイン科 卒業。
プロダクトデザイナーとして、音響機器メーカー(パイオニア)およびデザイン事務所(CFI)にて、通算300種類以上の製品デザインに携わる。
グッドデザイン賞受賞16回(うち産業機器部門大賞2回受賞)。
1997年、マースエンジニアリング(東証6419 現マースグループホールディングス)からのヘッドハンティングにより、同社デザイン室長に就任。
社長直轄組織のプレーイングマネージャーとして、グループ企業各社の製品およびサービスのデザインから、ブランドイメージコントロールまで、幅広い業務に携わる。
2016年退職。
2005年、インハウスデザイナーを続けながら、アーティストの びわゆみこ と、クリエイティブユニット Studio BIWAHOUSE(後にBIWAHOUSE)を立ち上げ、プロダクトデザインのみならずアート領域にまで活動の幅を広げる。
( アート領域での実績はこちら → https://miuraori-biwayumiko.jimdofree.com/ )
2023年、個人事業だった BIWAHOUSE を法人化し、合同会社 BIWAPLUS を設立。
現在に至る。